【EC座談会2020】#2 D2C事業を成功させる、ECシステムの特徴と選定

第2回EC座談会

第1回目の「2020EC座談会」では、大手食品メーカにてD2C新規事業開発の責任者と、コスメD2C事業の経営者の2名の相談者を交えて、「ECの新規事業計画の秘訣」についてアドバイザーの実績を元に話し合いました。
第2回目である今回は、新規顧客の獲得や、顧客維持継続(CRM)、バックオフィスについての相談を進める前に、先ずは事業を展開するために基本となる、「ECシステムについての全体仕様・機能と運用について」整理することにします。

シリーズ一覧

1.ECシステムの選定基準とは

ファシリテーター尺田(以下、尺田):
事業企画のアウトラインについてはまだまだお話しが尽きないようですが、事業展開のコアとなるECシステムについて、お話しを進めましょう。児嶋社長は、現在ASPカートで事業運営をされていますが、選定理由についてお伺いできますか。

相談者 児嶋社長(以下、児嶋):
はい、当時私は知識や経験が無い状態でのスタートでしたので、知人の経営者からの勧めや、いろいろなベンダー主催のセミナーなどに参加してみて、月額の費用が安く済むことに魅力を感じ、現在のASPカートを導入しました。

それでも、初期費用として、ECサイト制作費用やシステム設定費用で300万円ほどの費用が発生し、更に連携する外部システム費用、決済サービス利用費用とWMSの費用が別途発生しました。

現在は、新しい施策や事業拡大に伴い、広告効果やそれに伴う顧客の状態を把握したり、又、手作業での運用業務では煩雑になってきたこと、施策の数値が見えにくくなってきたことなどから、複数の外部システムを連携して運用しています。

尺田:
ありがとうございます。それでは先ず、基本機能仕様や拡張性、柔軟性、外部システムとの連携の容易さなどについて、後々のアドバイスをわかりやすくするために、ECシステムの提供の形から整理して行きましょう。

ECシステムのサービス提供には、次の5つに分類されることはご存知じかとは思いますが、特徴のメリットとデメリット、留意点について整理、おさらいをしておきましょう。

  • ASPカート
  • オープンソース
  • ECパッケージ
  • フルスクラッチ
  • クラウドECパッケージ

2.ASPカートシステムの特徴

尺田:
最初は、児嶋社長も現在導入されているASPカートですが、一般的に、インターネット経由でASPベンダーが用意している環境にアクセスして利用するECカートシステムですね。ECを始めるのに必要な機能が最低限整っていること。また他のEC提供サービスと比べ、導入スピードが早く、初期費用、ランニング費用が共に低価格なこと。よって低予算でECサイト構築が実現できます。他のECシステムと違いサーバー環境の構築や運用保守が不要です。

但し、低価格で利用できる分、機能やシステム連携やカスタマイズに制限があります。また、ベンダーが運用管理するサーバーは、他のEC事業者のシステムと相乗りした共有環境にて提供される形式なので、その環境下に、ECシステムの基盤や、顧客データ・商品データ・取引履歴データなどが、一定期間保存・保有されます。

児嶋社長、現在ご利用中のASPカートについて、運営担当者から見てのメリット・デメリットについて教えて頂けますか。

児嶋:
そうですね、私が導入しているASPカートの導入利用・運用するメリットとしては、先ず、導入実績が豊富であるため、ECフロントのデザインテンプレートがそれなりに準備されていて展開がしやすかったことがあります。また、ECシステム本体に無い機能については、外部提携するパートナーのサービスが用意されているので、ワンストップで必要最低限ECのサービスインが可能でした。

事業が成長するにつれて、連携している外部システムもそれなりには追加出来ていました。事業を始めていろいろな面で気づくことが多いのですが、分析用のデータ連携が不足がちだったり、運用が手作業ベースで一括処理ができなかったり、システムの反応が遅かったりします。

尺田:
連携サービスですが、初期導入時にはどのような外部提携しているサービスをご利用されていましたか。

児嶋:
そうですね、先ずは自社ドメイン取得サービス。決済サービスでは、クレジット、後払い決済、代引きですね。後払いでは、請求書コンビニ払いを選択していました。発送するために、WMSは必要でしたが、どれが良いかわからないので連携済サービスを選択しました。あとは、新規獲得に必要なLP制作サービスや、ABテストが可能なサービスを選択しました。

追加で利用したサービスについては、広告配信・管理サービス、メール配信サービス、ヒートマップサービスなどです。最近は、ソーシャルログインサービスを検討しています。

自社のスタッフに専門知識やIT開発スキルが無くても簡単かつ低コストで導入が可能とはなっていますが、いざ1から自身で環境設定しようとすると、そう簡単ではなかったです。やはり、それなりの業務知識、全体の機能の理解と、どうしてその設定項目が必要で、どうデータとして反映されるかの理解は必要です。

後は、実感はしていないのですが、ASPベンターが、セキュリティなどサーバーメンテナンスやECソフトウェアの機能アップメンテナンスをしてくれるために、基本追加コストや運用工数は発生していないですね。

今回の相談にも関わるのですが、ASPカートのデメリットとしては、バックオフィスの運用に、思った以上の手間がかかります。例えば、広告効果の測定に必要なデータの取得が思うように出来なかったり、様々な運用面からみたときに、顧客との対応履歴の保持に問題があったりなど、データ仕様が不足がちなところはあります。

ASPカートの特性から機能の追加変更がASPベンダー次第なので、追加で欲しい機能の実現は期待できません。カスタマイズを相談しても、基本できないとの返事を貰います。連携パートナー以外の外部システム連携ができないことが多々あるので、施策が展開出来ないことが、多くなってきました。

組織や人的な運用面では、バックオフィス管理画面のデザインはほぼ固定で制限があるのでスタッフが慣れるまでは大変ですし、当初の運用設計から事業を拡大して時を経るごとに、運用方法は変わっていくので、それに応じてデータの持ち方など追加、変更できないので、整合性が取れなく事業データが断片化されてしまっています。

尺田:
ありがとうございます。事業拡大とともにASPカートでは持ち堪えられない状況になっておられるようですね。

3.オープンソースのメリット・デメリット

尺田:
次にオープンソースの特徴を簡単に説明しますね。オープンソースとは、基本プログラムのソースコードが無償で公開されて、ライセンス形式で商用・非商用問わず、誰でも構築が可能です。費用は一般的に、初期構築費が数十万円から(カスタマイズボリュームによる)、ランニング費用が数十万円で利用することが可能です。

オープンソースのメリットとしては、多くの事業者が利用できるように、ECシステム基本機能は充実していますし、カスタマイズはもちろん、機能拡張する為のモジュールやプラグインも数多く提供されています。システム構築費用や工数削減できるように、工夫改善されていることと、ライセンス費用がかからないため比較的コストを抑えることができます。またベンダーロックされないというメリットもあります。

ソースコードが開示されているため、プログラムの脆弱性などを狙った攻撃によるセキュリティリスクがあります。特に最近多いクレジットカード情報や個人情報の漏洩がこのタイプですね。もしセキュリティ関連のインシデントが発生してしまうと、一時的にECサイト閉鎖や運営企業自体の信頼・信用の失墜を招きますので、十分な注意が必要です。

4.ECパッケージ・フルスクラッチとSIerとの付き合い方

尺田:
次にECパッケージについてですが、こちらはECサイトに必要な機能が豊富に用意されており、デザインやカスタマイズが柔軟に対応可能です。パッケージベンダーやSIer(システムインテグレータ)にECシステム構築を依頼します。導入企業の自社データセンターに構築するオンプレミス、最近ではクラウドのIaaSに構築し運用します。

パッケージの費用は、一般的に初期構築費用が1000万円から(カスタマイズボリュームによる)、ランニング費用が数十万円で利用することが可能です。ゼロから開発するフルスクラッチと比べ、開発工数が減りますので、初期構築費用は抑える事は出来ます。初期費用が数千万からするフルスクラッチは、大規模ECサイト向けなので今回は説明を省かせていただきます。

パッケージのメリット・デメリットについては、田中部長から、既存業務の基幹システムをSIerにご相談された経験からお話し頂いてもよろしいですか。

相談者田中部長(以下、田中):
はい。パッケージのメリットとしては、現状の基幹システムなどの経験からお話しすると、SIerやシステムベンダーのサポートを受けられるため安心して運用できることと、システム保守を任せているので、セキュリティや初期不具合などについては、報告レベルで済まされる点があるので、発注者側もシステムパッケージについてはそれなりに詳しく理解していないといけないです。

個別カスタマイズは実装していますが、ユーザー部門からの要望を上手くまとめ、且つ費用との相談でカスタマイズ項目の優先順位を決める必要があります。単純な費用対効果で語れないことが多くなってきました。一方で、昨年の税率変更のような基本的な仕様変更のアップデートや、システムのセキュリティアップデートは、保守費用の中で対応してくれますね。知り合いの会社では、税率変更の際に追加費用を請求されたところもありますので、一概には言えませんが。

無料ではないですが、初期導入時のマニュアルやトレーニングといった運用支援は充実しています。ただし、導入後の社内人事異動などで担当者が変わる場合もありますので、それも念頭に自社運用体制を整えてないといけないですね。

パッケージのデメリットとしては、初期構築費用の他、月次や年間のライセンス利用料、システム利用ID数や登録ユーザーID数が事業規模に応じてライセンス費用が変動するので、コスト管理が大変になります。インフラ関連では、ページアクセス数などへのキャパシティ管理が大変です。また、意外と見えていないものが、OSやDBのライセンス費用や、アップグレードですね。

カスタマイズについては、弊社の基幹システムには、追加費用は発生しますがプラグイン(機能拡張)オプションが用意されています。これで補えない機能をカスタマイズして実装しているので、開発費用をSIerへ支払いました。

更に見えないコストとして無視できないものは、現場のユーザー部門の工数ですね。要件と仕様のフィット&ギャップ、PoC、モックアップ確認、UATなどは、最終的には情シスではなくユーザー部門の関与工数なので、見えないコストとして発生しています。

要因としては、ユーザーからの要望の取りまとめ方が大変難しいです。よくありがちな、「それ聞いていない、使いづらい」「その機能ないの」や、工夫すれば実現できる運用手順などを、システム要件に入れられて機能実装の見極めやプロジェクトコントロール、コストコントロールが出来なくて、ついつい予算が拡張してしまいます。利用ユーザーからみて簡単そうに思える要求機能が、システム実装に際しては大変だったりしますね。例えば、CTI連携とか、決済サービスの追加とか、それに、帳票出力対応は多額の追加コストが掛かるので悩ましいです。

BIツールなどの外部システムを導入すると、追加導入するシステムより、データ連携するためのパッケージの改変コストが異常に高かったりします。また、カスタマイズが入ると、SIer、ベンダーどちらに聞いても、機能仕様の詳細についての回答や、基本実装機能への影響確認に時間がかかることがあります。

尺田:
田中部長の会社のシステムは、自社内のサーバーですか。それともデータセンターや、クラウド環境ですか。

田中:
会計システムなどは、データセンターに置いていますね。販売管理と製造管理関係は、自社工場内のサーバールームに設置しています。

今回のECシステムは、事業拡大だけに限らず、アクセスの負荷対策や、特に、先ほどもお話しのとおり、最近多く聞く、セキュリティリスク、クレジットカード情報漏洩対策は、自社だけではとても対応できないですので、PCI DSS準拠のクラウドで検討を進めています。

5.クラウドECパッケージとは

尺田:
それでは、最後にクラウドECパッケージについてご説明、定義をしましょう。

クラウドインフラでの利用を前提とした設計でビジネスの規模に合わせて最適な環境を提供可能です。スモールビジネスとしてスタートし、規模が拡張した際は売上100億円規模の大規模サイトでも対応が可能です。クラウドのIaaSにインストールする形で提供し、基本機能、セキュリティに関しては定期的にアップデートし、都度適用されます。機能を開発しているのはサードパーティーではなく提供ベンダー自身なので不具合等生じた際は提供ベンダーが対処します。初期費用と月額費がパッケージ型に比べ低価格になる上、パッケージ型の様に導入企業専用サーバーを希望のクラウドサービスのリージョンに設置が可能です。初期費用300万から、ランニング費用数十万から利用可能な所が多いようです。クラウドECパッケージは標準で高度な機能が実装されていて、外部システムとの連携にも柔軟に対応ができるという特徴があります。

弊社の提供するECオリジン by GMOもクラウド型のECパッケージで、EC業務に必要なオペレーションを想定して設計されており、極力カスタマイズを行う必要がないように、数多くの標準機能が用意されていることが特徴です。



次回は、EC事業に必要な機能と連携システムについて話し合います。


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Six commerce編集部

2019年にスタートしたEC特化メディア。昨今のECシステムの様々な情報を発信します!


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