【前編】小売業界で勝ち続けるオムニチャネル戦略とは?

【前編】小売業界で勝ち続けるオムニチャネル戦略とは?

1.はじめに
はじめに

通販、流通業界で、「オムニチャネル(Omni-channel)」という名の販売戦略が、いま改めて注目されています。スマートフォンが普及し、誰でも簡単にネットに接続できる環境が整ったことで、顧客が求めるサービスが多様化し、小売業やECに携わる人などを中心にオムニチャネルの需要が一層、高まっています。

経済産業省は、2014年を「オムニチャネル元年」と位置付けました。単なる流行りにとどまることなく定着し、その勢いは加速しています。生き残りを賭け「取り組むべき概念と戦略」と断じる専門家がいます。しかし、その概念と戦略は広く、分かりにくいものでもあります。またオムニチャネルと似た言葉もあり混同しがちです。

ここでは、そんなオムニチャネルの今とともに、オムニチャネルを実践する会社がたどった道や、成功への歩みを探り、勝ち続けるオムニチャネル戦略を追及していきたいと思います。オムニチャネルを知らない人はもちろん、「何となくは理解しているけど…」、「聞いたことはあるけど結局、何をすればいいの」という学びたい、実践したい人たちにもオススメです。

2.オムニチャネルとは?
オムニチャネルとは?

「オムニチャネル」とは、どういう意味なのでしょうか?「組織横断型の顧客戦略」----。表現を変えると「顧客満足度を高めて利益を向上させる考え方」。さらには「ITを駆使し、おもてなしの精神を発揮する顧客対応」などとも言えるかも知れません。オムニは元はラテン語で「すべて、あらゆる」という意味。難しく考えがちですが、映画や小説、CDなどにありますよね。オムニバス映画、オムニバス形式。独立した作品をまとめて一つの作品にすることを意味しています。チャネルは「経路」を意味し、マーケティング業界では「販売活動のために顧客と接点を持つ場所や手段」として使っています。この二つを結びつけることで、「あらゆるチャネル」を連携させ、顧客に働きかける戦略」を意味する言葉となりました。輝かせるには「消費者視点」「顧客本位」の考え方は欠かせません。消費者行動は、すでにオムニチャネル化している、という声も聞こえます。現代ビジネス、ECサイトにオムニチャネル戦略が欠かせないことは確かです。オムニチャネル戦略で使われる広義の意味でのチャネルは以下のようなものがあります。
・リアルの現場:実店舗、受取拠点(コンビニエンスストア、宅配ロッカー、郵便局など)、展示場、展示会、各種イベントなどでの即売会、セミナー、訪問販売など。
・デジタル領域:自社ECサイト、モール型ECサイト、スマートフォンアプリ、FacebookなどのSNS、企業WEBサイト、オウンドメディアなど。
・各種広告や紙媒体:カタログ通販誌、WEB広告、紙媒体の広告、テレビ通販、テレビCM、BS・CSテレビのインフォマーシャル広告、折込広告、ダイレクトメール、コールセンター、製品カタログ、屋内外広告など。

オムニチャネル戦略にはリアルもデジタルも関係ありません。企業が保有するすべてのチャネルを統合することがオムニチャネル戦略の基本です。

3.オムニチャネルの重要性
オムニチャネルの重要性

オムニチャネル戦略を初めて導入したのは、米国の百貨店大手「Macy's(メイシーズ)」というのは、知られた話かも知れません。ですが、オムニチャネル的な販売・顧客対応の先駆けは「実はAppleだ」と考える専門家がいます。Appleは、パソコン「iMac・MacBook」やデジタルオーディオプレイヤー「iPod」、スマートフォン「iPhone」、タブレット端末「iPad」などの製品開発力やブランド戦略で世界中に浸透した、というのは異論のないところでしょう。

しかし、その大成功の背景には、製品とサービスにリアルとネットを融合した販売のあり方があることは、あまり知られていないのではないでしょうか。音楽などのコンテンツをネット配信する「iTunes Store」で使う「Apple ID」を軸とした、販売と顧客管理の統合です。顧客をApple IDで一元管理し、実店舗の店頭と販売サイト、メンテナンス情報を連携させている強みが、顧客との接点を増やし、満足度を高めていると言えるかも知れません。

そんな要素も加味されて世界を席巻中のAppleですが、続々と生み出すスマートフォンやタブレットが、まさに進化するオムニチャネルの根幹となっているのも、故スティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)はお見通しだったのでしょうか。

オムニチャネル拡大の背景

オムニチャネルという概念が広まった背景を見るとき、やはりインターネットやスマートフォン、SNSなどの普及・発展は欠かせません。それは消費者行動の変化に直結ということ。今や私たちは、商品情報の入手から、複数店舗の価格、サービス比較、評判や口コミを前もって知ることができ、購入の際に生かせます。すべてをスマートフォンから済ませることができるのです。

一方、実店舗を中心に経済活動をしてきた企業・事業主にとっては一大事です。必然的に消費者の行動パターンに合わせた戦略を求められるようになりました。これまでのように販売の経路は一つでなく、複数のチャネルを駆使し、消費者の購買形態を模索しながらの仕組みづくり、まさにオムニチャネル化に迫られているのです。

こうした消費者の利便性を追い求めた戦略固めは、いわゆるビッグデータの収集やテクノロジーの進化によって可能になりました。あるチャネルでの購買データを、ほかのチャネルでも活用することができれば、より最適な情報を利用者に届けることができます。

オムニチャネル導入のポイント

あらゆるチャネルを連携させて顧客感動を実現するために、導入のポイントを考えてみました。

■調査・検討の実施
まずは背景競合の有無や動向を調査し、競合先のオムニチャネル化の状況などを把握。ターゲットになる顧客を定め、チャネルや販売方法を検討します。

■組織体制の構築
実店舗、ECサイト、カスタマーサポートなど、チャネルごとに部署が分かれていると、チャネルをまたがった顧客へのアプローチは困難となります。実店舗と ECサイトの間で競争意識が芽生えると在庫管理の一元管理が機能しない状況になります。オムニチャネルを導入する際は、顧客の満足度向上を中心に、自社の売上・利益を考える、まとめ役を新たに立てる必要があります。

■実績配分のルール化
オムニチャネルでは部門を横断した活動が行われます。EC サイトや実店舗の区分を超えた購買が起こります。このような場合は、この売上をどこの実績とするかをあらかじめ定めておく必要があります。

■在庫情報の一元管理
実店舗などで品切れが生じた場合、チャネル内のどこに在庫があるかを把握し、短時間で顧客に提供できる仕組みの構築が重要です。リアルタイムに在庫の有無や数量、場所などを把握するための一元管理システムの導入が必要となります。

■顧客情報の一元管理
実店舗と EC サイトで管理していた顧客の属性や購入履歴、ポイント情報を一元管理することでチャネル間の垣根を取り払い、どちらで商品を購入しても顧客情報を把握することにより、きめ細かいアプローチを実現することができます。

オムニチャネル導入のメリット

オムニチャネルを実現することで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

■データ分析で最適化したマーケティングが可能に
オムニチャネルはデータの分析によってマーケティングの戦略を立て、その投資対効果を上げることができます。実店舗とECサイトで顧客情報を一元管理するため、それぞれの顧客の行動履歴や購入した商品の傾向など、さまざまなデータを分析可能です。そのため、顧客一人ひとりに合ったきめ細かなマーケティングが実施できるようになり、自社の商品から「顧客が求める商品」を提供できます。すると売り上げが向上し、顧客満足度も上昇します。

■ショールーミング消費を自社売上に
ショールーミングとは、実店舗で商品をチェックして、ECで商品を購入する消費行動のことです。実店舗で商品を確認した後、その店舗とは異なる会社のECサイトで商品を購入されてしまうと、その店舗は他社の売上に貢献する店舗となってします。スマートフォンの普及により、ネット販売が増えたため、実店舗ではショールーミングを減らすことが大きな課題となっています。しかし、オムニチャネルを実現させ、実店舗で確認した商品を自社サイトでも購入できるようにすれば、どの販売チャネルから購入されても同じ会社の売り上げとなります。

■販売機会の損失を防止し、売上を拡大
オムニチャネル戦略では、実店舗、ECサイト、ECアプリ、SNS、テレビショッピング、広報誌、雑誌、通販カタログなど、さまざまなチャネルからの購買行動データを蓄積し、顧客ごとに最適化したマーケティングを実践することがキーになってきます。例えば、SNSの情報から商品を購入している人に対しては、他の商品もSNSで情報提供すれば、商品を購入してくれる確率は高まります。SNSで情報提供しなかった場合、商品購入の機会を損失してしまうことになります。同じように、商品ごとに店舗で購入しやすい層、ECサイトで購入する層など、顧客の生活環境や嗜好によって販売チャネルは多岐に広がるため、幅広い購買チャネルを抑え、顧客情報から最適化したマーケティングを実践することで、取りこぼしを防ぐことができます。また、在庫管理を一元化すれば、在庫切れによる販売機会の損失を最小限に抑えられます。
■システムの統一で経費削減と作業時間の短縮を実現
販売管理システムを統一することで、システムの構築や維持にかかるコストを抑え、管理体制を合理化できます。実店舗の販売管理スステムと、ECの販売管理システムが分かれている場合、それぞれのシステムを運用しなければならず、作業時間がかかるだけでなく、システムの運用費用、保守・メンテナンス費用などがそれぞれのシステムで発生します。システムを統合することで、こうした経費をまとめることができ、コスト削減につながります。また、作業時間の短縮できます。



ライター紹介ライター紹介

Six commerce編集部

2019年にスタートしたEC特化メディア。昨今のECシステムの様々な情報を発信します!


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